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ネイチャーポジティブのススメ
みなさんこんにちは。春になりそうでまだ寒いですね。桜の満開ももう少し時間がかかりそうです。早く春が来ますように。
こうして季節を感じることができるのも母なる自然のおかげ。こうして生命を謳歌できるのも宇宙の理のおかげです。神様を信じるかどうかはともかく、私たちは自然の中に生かされている、これは間違いがありません。私たちの存在自体もある意味で「天然」なのですから。
そのことを忘れて、ひたすらに自然を克服しようとしてきた人類の歴史は、1740年代の産業革命以降に地球のあり方を大きく変えてきてしまいました。最初は石炭の利用と蒸気機関文明で、そして1900年代以降は急速に発達した石油の利用と内燃機関文明で、場合によっては数億年かけて蓄積してきた自然資産をものすごい速度で破壊してきたと言えるでしょう。
そのツケが回ってきて、いまの人類文明は地球の温暖化と生物多様性の危機に直面しています。地球の温暖化は単に暑くなるというだけではなく動けない植物とサンゴを時間をかけて殺します。そうすると植物とサンゴをすみかとする生態系が滅びます。海では生態系の3割がサンゴに依存していますから、サンゴがなくなるとシャチを頂点とする海の生態系全体が危なくなる。アインシュタインが「ミツバチがいなくなると4年で人間がいなくなる」と言ったとか言わないとか。真偽はともかくその連鎖は本当に起きる可能性があります。つまり「他人ごとじゃない」んです。
これを変えていくには、自然の力にいま一度頼り、人間社会を律することで自然を減らす方向から増やす方向に逆転させ、次世代に引き継ぐ必要があります。非常に単純な「危機管理」であり、道徳のためではありません。そうした危機意識がようやく具体的な戦略となって現れたのが「ネイチャー・ポジティブ」なのです。
ネイチャー・ポジティブは自然の再生(regeneration:リジェネ)という能力に着目します。本当に自然はすごい。そもそも「ゴミ」という概念がなく、落ち葉も糞尿もすべて次の世代の栄養となっていき、ぐるぐるとバリューチェーンを循環させることで「増える」という奇跡を起こし続けています。それに比べて人間のなんと醜いことか。バリューチェーンはまっすぐでしかなく、土から掘り起こした資源を「廃棄物」として捨てないといけない。ここで「輪っかを閉じる」ことが循環経済にもネイチャー・ポジティブにもつながっていくのですが、技術的にもルールとしても人類はその域に達していないと言えます。
とはいえ、明るい兆しも見えてきています。まずは「再生農業」。無農薬無肥料に加えて「耕さない」(!)というとてつもないブレークスルーが起きようとしています。人間が耕す代わりに植物の根に耕させ、多種の植物が共存し動物が関わることでより強い植物とより強い土壌を再生させようとするものです。現在とてつもなく大きな投資が動いており、例えばネスレは2030年までに再生農業から50%以上のコーヒー豆を調達する宣言をしています。また、コットンなどにも再生農業は広がっていて、例えば「J. CREW」は2024年に再生農業でつくった綿を使ったシャツをインターネットで売り始めました。
ほかにも様々な手段でネイチャー・ポジティブは進んでいきます。アドベンチャー・ツーリズムは観光客がお金を払って自然について学び、またそのお金の一部を自然の保護と涵養に回すことで「プラス・プラス」を生み出します。積水ハウスの「5本の樹」計画は、家を建てるときに木を5本植えることで、長期的に家を建てた時のマイナスよりも5本の木がつくり出すプラスのほうが大きくなるというコンセプトです。これから一次産業のみならず、二次産業、サービス産業、金融などにおいても間違いなく「ネイチャー・ポジティブ・ビジネス」であるかどうかが試金石となってきます。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいた情報開示はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と近いうちに統合されていくでしょう。そして、10年以内に上場・非上場含めてすべてのビジネスはネイチャー・ポジティブを追求しなければならなくなります。トランプがどう言おうと。
今の世代のウェルビーイングのために、そして次の世代のウェルビーイングのために、また地球全体のウェルビーイングのために、さらにはあなたの会社の利益のためにも、いますぐネイチャー・ポジティブの実践を始めてください。
田瀬和夫
SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO