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人権デュー・ディリジェンスデジタルサーベイ
最短最適なリソースで企業の人権リスクを可視化し人権DDを加速するー

SDGパートナーズ有限会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:田瀬和夫、SDGパートナーズ)は株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所(本社:東京都中央区、所長:大島崇)、株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ(本社:東京都中央区、代表取締役:白藤大仁)との共同研究開発により開発した企業が自社の人権リスクを定量的に測定する人権デュー・ディリジェンスデジタルサーベイを2023年11月24日に提供開始します。

1.今日の「ビジネスと人権」の大きな潮流

今日ほど「人権」という言葉がビジネスの文脈で聞かれるようになったことはないように感じます。これまで企業における人権問題といえば、障害を持つ人に対する差別の問題、採用における同和問題、あるいは製造物責任における消費者の権利といったことが中心でしたが、昨今では例えば、強制労働によって作られた部品・素材に関することや、未成年の子どもに対する性加害、あるいは人工知能(AI)による偏見の助長など 、非常に幅広い事柄を含むようになりました。 これらは、2011年に国連の人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に端を発します。この原則では、これまで自社の活動範囲内のみで企業の責任を追及していた国際的なルールを改め、企業は「サプライチェーン全体で」人権に関して責任を持つべきであるという新しい考え方が導入されたのです。そして、その考え方は欧米を中心とする国々によってつぎつぎに国内法として実現されていきました。2015年に成立した英国の「現代奴隷法」はその最も早い例と言えます。

その後、ESG投資の中で「ビジネスと人権」が重視されるようになり、日本国内でも少なくとも上場企業はサプライチェーン全体をカバーする「人権方針」を持つこと、そして後述するように「人権デュー・ディリジェンス」というプロセスによって自身の事業に内在する潜在的あるいは顕在化している「人権リスク」についてこれを評価し、そして低減することが求められるようになりました。つまり、間接的で見えない部分を含めて「人を大切にする」ビジネスを確立することが国際基準となってきたのです。

2.企業に求められる「人権デュー・ディリジェンス(人権に関する相応の注意)」

ところがこの「人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)」、これまで経験のない企業にとっては、何をどこからどうやったらよいのか、皆目見当がつかない厄介な代物です。具体的には(1)本社・子会社・グループ会社など自分自身に近いところで人が蔑ろにされていないか、(2)サプライチェーンの上流、すなわち自社で使う原料などの取引先、そのまた取引先などではどうか、(3)下流すなわち顧客や社会に対してなんらかの悪影響を発生させていないか、(4)その他さまざまな取引先との関係で人権を奪われている人がいないか、といったことを調べるのですが、これが一筋縄では行きません。 昨年(2022年9月)、経済産業省が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」 という文書を発表しました。この文書は非常に正確にどのように人権DDを進めればよいか解説しているのですが、これとて人権という分野に相当に精通していなければ、何が書いてあるのか難解で理解できないでしょう。また、この文書に「サプライチェーン」という言葉が含まれているため、多くの企業関係者が「ああそうか、原料の産出国まで遡って現場まで見に行けばよいのか」といった、単純な理解をしがちです。確かにその部分も重要ではあるのですが、それでは「なぜサプライチェーンに人権リスクが生じるのか」といういちばん大切な部分を飛ばしてしまうこととなります。

実は、経産省のガイドラインも明確に書いているように、もっと最初にやるべきこと、そしてサプライチェーン全体の人権リスクに最も影響を与えるのは、「自社・子会社・グループ会社」の人権状況です。例えばあなたの会社の組織が軍隊のような企業文化を持っていて、長時間労働当たり前、パワハラは日常茶飯事でみんな麻痺している、女性や障害を持つ人は隅に押しやられている、といった仕事の仕方をしていたとしましょう。これはこれだけであなたの会社の未来のために大いに死活的なリスクであることは容易に理解できると思いますが、これらが危ないのはあなたの会社の取引先や、そのまた取引先にも多大な影響とリスク、そしてそうした「人を大切にしない文化」の伝染を引き起こすことです。 例えばあなたの会社で、金曜日の夕方に取引先に無理な発注をかけて月曜日までに持ってくることを強要することが当たり前になっていたとします。取引先は従わなければ取引を失うわけですから社員をかき集めて必死にこれに応えようとする、その結果お父さんお母さんが週末に帰ってこない家庭がたくさんできてしまう可能性があるわけです。人権リスクは容易に「伝染」するのです。この点、人権DDの一丁目一番地は「自社の人権リスクの把握」で間違いありません。

3.自社の「人権リスク」を推し量ることの難しさ

しかしまた、自社の人権リスクを推し量ることも簡単ではありません。これまで行われてきた手法としては、社員にアンケートを配って「パワハラがありますか」とか「理不尽な転勤命令はありますか」といった質問に答えてもらったり、あるいはランダムに職員を選抜してその人たちにヒアリングを行い、例えば「上司に不満を言いにくい風潮がありますか」とか、「ホットライン窓口を使う気になりますか」といった質問への答えを聞き取るといったことがあります。実際に主要なコンサルティング会社の人権DDで、現在でもこのような手法が行われています。
しかし、こうした調査はある程度、なんとなくは社内の課題や雰囲気・文化ということは推し量れるものの、それが正確にどのくらい深刻なものなのか、どのくらい顕在化しているものなのかを正確に量的に測ることは不可能です。多くのアンケートは非常に大雑把で人権リスクを評価するには不十分ですし、ヒアリングにしても例えば加害者は絶対に人をいじめているとは言いません。また被害者の側も多くの場合、被害を隠します。なぜなら話したことによって報復を受ける可能性に恐怖するからです。
ましてや「それがどうして起きているのか」という原因や構造にまで迫ることはまず困難です。ヒアリングによってある部署がその他の部署よりもパワハラの危険が大きいことが判っても、それが特定の部長とか課長という個人によって引き起こされているのか、それともそのような人権リスクを孕んだ個人が昇進するような企業文化・制度があるためなのか、そこで従業員がどのようなストレスを抱え、それがどのように次の人権リスクに繋がっているかなど、「因果関係」を紐解くことはいまの人権DDの手法では非常に難しいのです。その結果、対抗する企業の「打ち手」も研修や懲戒などでお茶を濁す、ということになってしまっています。この点が現状の人権DDの最も大きな課題であり、乗り越えるべき壁なのです。当社とリンクアンドモチベーション社が「人権DDデジタルサーベイ」を開発したのは、こうした課題を一気に解決するためと言えます。

4.「人権DD デジタルサーベイ」でできること

(ア) 自社・グループ内の人権リスクの極めて正確な評価

「人権DDデジタルサーベイ(以下、当サーベイ)」では、自社の従業員の一部ないしは全員に約20-30分程度 のサーベイに回答していただきます。回答はPCでもスマートフォンでも可能であり、すべてYesかNoの二択か、あるいは7段階での感覚的な評価を選択式に求めるものであり、記述式ではありません。また、役職や年齢層といった分析に必要な基礎情報は収集しますが、個別の回答について個人が特定できるような調査方法は行いません。100人くらいから何万人でも実施が可能です。 内容は、法務省人権擁護局が示した25種類の人権リスクをベースにして、それぞれの人権リスクが従業員のみなさんにリスクとして認知あるいは理解されているかどうか、また実際にみなさんの身の回りに最近起きているかどうかをYesかNoかで伺う方式です。この中には、状況によって人権侵害を構成したりしなかったりするもの(グレーなもの)も含まれていますが、お答えになる従業員の方が人権リスクに対してどう感じているか、を見える化することがもっとも大きな目的です。また、昨今重要となっている「心理的安全性」と「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」についても、人権リスクとの関係を推量するため、定量的に測る取り組みを行っています。これらについてはさまざまな計量の方法論があり、また一口に「偏見」といっても非常に多種多様ですが、このサーベイにおいてはビジネスの現場で最も人権リスクに繋がりやすい、例えば権威のある人のコメントをそのまま鵜呑みにする「ハロー効果」や男女の役割が心のなかで固定化している「ステレオタイプ」、といった種類のものを可能な限り正確に定量的に測定する試みを行っています。

こうしたサーベイの結果、下記の帳票例にあるように、さまざまな人権リスクに関して、(1)従業員の多くが理解しているけれども状況を変えられず多く発生しているリスク、(2)理解していないから多く発生しているリスク、(3)理解していないがあまり多く発生していないリスク(潜在的に危ない)、(4)理解しているので発生を抑えることができているリスク、という4つの象限に分類して分析することが可能となります。例えば日本企業で典型的に(1)に当たるのは長時間労働であり、(2)に該当するのは「つべこべ言わずにやるのが当たり前」といった企業文化に基づくパワハラであったりします。

また、これらの情報とともに、年齢別、職種別、部署別のデータを分析すると、極めて解像度の高い人権リスクの現状があぶり出されることがあります。例えば、「長く働いて当たり前」と思っている管理職の割合は40代前半でピークを迎え、実際に長時間労働している年代は20代がピークであることが判明すると、40代の課長さんたちがご自分たちが働いてきた経験から、20代の新入社員に長時間の残業などを強いている構図が明確に浮上するのです。こうした解像度の高い現状認識がほぼすべての人権リスクに関してできるように、当サーベイは設計されています。
これらに加え、このサーベイについては、データの蓄積とともに「全国平均と比べて当社はどのような状況か」、「同じ業界の平均と比べてはどうか」といった、メタな視点からみた企業分析も可能となります。つまりデータの蓄積が大きいほど正確な人権リスクの定量が可能となってくる仕組みです。

(イ) 人権リスクの根本原因分析と打ち手の検討-心理的安全性とアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)-

ただし、当サーベイの結果そのものは、健康診断で言えば「レントゲン写真」でしかありません。例えばみなさんが健康診断でCTスキャンを撮って、医師から「ここが白くなっていますね、腫瘍ですね」と言われたとしましょう。あなたにとっては死活問題の大きなリスクがそこにあることが判明するわけですが、それだけでは「なぜそうなってしまったのか」、「どうすればそのリスクを取り除けるのか」は判りません。人権リスクに関してもまったく同じことが言えます。サーベイの結果はあくまでも「レントゲン写真」です。
そこで、病気の原因を突き止めるのに役に立つと思われるのが先にご紹介した「心理的安全性」と「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。いずれも人権リスクとの因果関係が理論として学術的に明らかにされたわけではありませんが、少なくとも大きな相関関係があるものと考えられています。また、現在人的資本や人事戦略の分野でも、両者が従業員の生産性に与える影響が学術的に研究されています。
例えば「つべこべ言わず上から言われたことは夜中まで働いてもやり遂げることが当たり前」という思い込み(偏見)が組織全体にはびこっていれば、これは容易にパワハラや長時間労働の原因となると予想ができます。また、パワハラがはびこっている職場では「言いたいことが言えない」つまり心理的安全性が低いことが蓋然性として予測できます。ただし、例えば極度に軍隊的な体質を持った組織の場合、「パワハラがあるのに心理的安全性は低くない」というような例外も表出します。
こうした、人権リスクと従業員の心の状態を定量的に解析することにより、SDGパートナーズとリンクアンドモチベーションの専門家は、御社のチームとともに「人権リスクの原因と機序(メカニズム)」を追究していきます。原因は制度である場合もあれば(多くの場合人事評価制度)、長い間の企業文化が凝り固まった場合もあれば、トップの責任である場合もありえますが、原因が判れば対処方法も検討が可能です。
多くの場合、対処の方法としては、制度改革、人権に関する研修と啓発、場合によっては懲罰といったことも考えられますが、いずれにしても重要なのは、人間の心(マインドセット)を変えるには一定の時間が必要であるということです。1年程度ですべての人権リスクがきれいに消え去るというようなことは残念ながらありません。また、場合によってはリンクアンドモチベーション社 が提供する「モチベーションクラウド」 などの、エンゲージメント手法との組み合わせが奏功する可能性も十分に考えられます。

(ウ) 求められている人権DD開示

現在、ビジネスと人権に関しても、あるいは人的資本に関しても、企業には上場しているかしていないかに関わらず、どのような方針を持ち、どのような状況にあり、どこを目指すのかについての情報を広く開示することが求められるようになりました。それも、その基準は毎年のように上がっていき、ちょっと前までは人権方針があればよかったのですが、最近では「人権DDの結果とこれに対する分析、またここから取る措置」まで開示せよ、というのが国際的なスタンダードとなりつつあります。こうした要請にきちんと応えられている日本企業は残念ながら少数です。
当サーベイはこうした高い要請に正面から応えることができるツールです。サーベイの結果をどこまで定量的に開示するかはそれぞれの会社の判断ですが、例えば「長時間労働」と「パワハラ」が特に販売部門や製造部門において顕著だったので、これに対してこれこれの措置をいつから採ることにした、といった一般的な表現でも、そのベースとして確固たる定量的なデータによる下支えを持つことができることとなりますステークホルダー、特に投資家との関係において、このような定量データは大きな強みとなりえります。

5.国際的な人権DDの潮流における本ツールの位置づけと特許申請

人権DDをどのように設計しどのように実践していくかは、現在多くの企業が試行錯誤している段階であり、様々な組織や政府から出されているガイドライン的なものは存在するものの、こうでなければならないという定式はありません。その中で、本サービス「デジタル人権DDサーベイ」は、世界でもおそらく初めて「人権リスク」、「心理的安全性」、「アンコンシャスバイアス」という3つの学術的にも注目されている概念を統合的に、かつ定量的に理解しようとするものであり、先進の人権DD手法であるということができます。 SDGパートナーズとリンクアンドモチベーション社は共同で本件サービスで使われている技術に関して、2023年10月25日に日本の特許庁に対して特許申請を行いました。また、本件技術は日本の企業のみに当てはまるものではなく、世界中の企業・組織・団体において活用が可能なものと考えられます。このことから、私たちはすでに本件サーベイの英語版の開発も並行して進めており、日本以外の企業、日本語と英語がグループで混じる企業などについても、対応が可能です。

6.可能な支援内容・お問い合わせ等

本サーベイを起点として、主に以下3パターンで御社の人権DDにご活用いただけます。

A.サーベイ実施のみ(報告会込み)
 サーベイの事前設計から実施、実施後の結果報告会までを行います。

B.サーベイ実施+詳細ヒアリング・分析示唆出し
 サーベイ実施後、結果を踏まえて人権DDに取り組むためにより詳細なヒアリングを行い、御社の人権リスク及び施策に対する分析と示唆出しを行います。

C.サーベイ実施+詳細ヒアリング・分析示唆出し+打ち手の特定・実行計画の立案
 サーベイと分析結果を踏まえ、具体的に御社で必要な施策を特定し実行計画の立案までを行います。

上記のほか、御社の状況に応じて柔軟に対応することも可能です。

info@sdgpartners.jp  (件名:人権DDデジタルサーベイに関する問い合わせ(貴社名))までお問い合わせください。

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