ビジネスと人権

「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)は大きく世界を変えていく

いま静かに、しかし急速に、「ビジネスと人権」ということが重要になってきています。これまで「人権」と聞くと同和問題、セクハラ・パワハラ等しか問題となりませんでしたが、2011年に定められた「ビジネスと人権に関する国連指導原則(UNGP)」(いわゆるラギー原則)」は、自社の社員でなくとも、例えばあなたの会社の取引先のさらに取引先が契約しているインドの工場の労働者や、あなたの会社が仕入れている木材が伐採されている途上国の先住民など、サプライチェーン上のあらゆる人々の人権の擁護が、お金を持っているあなたの会社の「責任である」と宣言しています。

このことは、現地の法令に従っておけばそれでよいとしてきたこれまでの企業のコンプライアンス概念を根底から覆すものと行っても過言ではありません。それもこの動きはどんどん加速してきていて、2015年に成立し2016年に施行された英国の現代奴隷法、2017年に成立したフランスの人権デューデリジェンス法、2019年に施行されたオーストラリアの現代奴隷法など、すでに日本企業の義務として人権の保護とそれに関する情報開示が定められるという状況が生まれてきています。

まだ「対岸の火事」とお感じになる方も多いでしょう。しかし例えばノルウェーの年金基金は、人権の取組みが不十分な日本企業に対して、実際にすでに「株式の引き上げ(ダイベストメント)」を行うことを個別に通告していますし、その情報を公開すると宣言しています。日本政府も2020年までに「国別行動計画(NAP)」を策定することを宣言していますが、日本企業はいま行動を取らなければ世界中から置いていかれることとなります。このことがもたらす経済的損失は膨大です。

企業の売上や成長率は、人間に例えると腕力や瞬発力のようなものです。一方でサプライチェーン上の人権問題は内臓の健康状態と言えばよいでしょうか。どんなに腕力が強くても肝硬変になっていたら長続きはしないでしょうし、内臓がしっかりしていなければ瞬発力も発揮されないでしょう。いま企業に求められているのは、常に自己の健康診断を行いつつ、その情報を開示していくことです。それによって長期的資金調達コストが定義されていくのです。

SDGパートナーズは経営における「ビジネスと人権」の位置づけについて経営陣の理解を支援し、また人権デューデリジェンスの実際のメカニズムを導入するサポートを行います。こうしたプロセスによって企業は確実に、長期的にグローバル市場で強くなることが可能です。